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中国国家機関との研究交流

アジア・東京債券市場創設フォーラム

金融ADR・オンブズマン研究 研究と活動と成果

アジア資本市場法制研究-シリーズ研究の研究活動とその成果

知的財産法制研究センター(RCLIP)

Capital Markets Association for Asia (CMAA)

中間プレゼン資料
中間プレゼン資料
   
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各プロジェクトの「研究活動」ボタンをクリックして頂きますと、プロジェクトの議事録や進捗状況などがご確認頂けます。

各研究企画にはそれぞれ多くの学内、学外研究員が参加しています。 公表可能な部分から公表する予定です。
各研究企画に登録されている研究員は、特に内部研究者のみとされている企画を除き、 すべての研究会に参加する自由があります。 ただし、開催場所の都合等の関係で、不可能な場合もあるため、研究員が他企画の研究会に参加する場合には、 事前に事務担当者に通知してその了解を得る必要があります。

企業法制・金融資本市場法制研究センター
法の基礎的概念・市民社会論等
企業と憲法秩序
企業と市場の民事法
制裁と紛争解決
企業と労働・環境
金融・資本市場と法
企業法制−理論・立法・解釈−
アジア企業法制、金融資本市場法制
ロシア・東欧・スカンジナビアの企業社会と法
日本の企業法情報海外発信システム

知的財産法制研究センター

企業・会計システム研究センター

 企画責任者  事務担当者

法の基礎的概念・市民社会論等 法の基礎的概念・市民社会論等

1-1. 基本的法概念のクリティーク
 日本の企業社会の構造の解明には、 ヨーロッパを出自とする近代法の諸カテゴリーが、 現代日本社会でいかなる変容を蒙りながら理解され用いられているのかを明らかにする必要があろう。 基本的な法概念が形成された思想史的背景に立ち返って概念を位置づけることが本グループの第一の課題である。 また「法の創造」の課題に関しては、いわばフィクションとして構成された近代法の諸基本概念が、 フィクションとしてもつその意義と限界を考察する作業が不可欠といえよう。 「基本的法概念のクリティーク」と題する本共同研究は、 実定法学と基礎法学との新しい協同関係を構築しつつ、新しい法学の可能性を切り開こうとするものである。 その内容は、一言で表現するならば、主要実定法領域における基本的な諸概念をとりあげ、そのexplicatio =Auslegung(解釈)、 つまりサヴィニーが規定した二つの条件の下で解明することである。 それは第一に、個々の法概念や法律条文の背後にある思想、 その思想を生成させた精神活動を生き生きと思い浮かべることであり、 第二に、そのような個々の法概念・法律条文・思想・精神活動なるものを、 個別的なものがそこから光を受けとるところの、法の全体像の中に位置づけること、である。
研究活動
 楜沢能生 水林彪 戒能通厚
 久米一世
1-2. 経済法・国際経済法の総合研究
 本企画は、グローバリゼーションの進展に伴って生じる経済法、国際経済法上の諸問題を検討することとしたい。現在、経済のグローバル化に伴って、国際カルテルや国際的企業結合が行われ、これが日本市場にも重大な影響を及ぼし始めている。したがって独占禁止法の域外適用をめぐる問題や競争法の国際的な執行協力のあり方が検討対象となる。またEPA、FTAについても、単なる経済的統合の視点だけでなく、東アジア諸国の平和的共存に向けた協力関係を樹立する上で果たすべき役割がないかを検討することも重要な課題の一つとなろう。
研究活動
 土田和博 須網隆夫
 
1-3. 市民社会論と法人・企業
 90年代に始まる日本社会の「構造改革」は、会社主義、企業社会として特徴づけられた日本社会の構造を改革対象に据えるものであった。しかしこの間の構造改革によって、日本社会は、本当に企業社会的構造を脱し、自立した市民が構成する市民社会へと脱皮したといえるだろうか。本部会は、企業社会としての日本社会の現時点での変容をいかにとらえるか、また成熟市民社会の構築に法と法学理論はいかなる役割を果たしうるか、という課題に、基礎法学的視座からアプローチする。具体的には、(1)日本のみならず世界的に隆盛をみる「市民社会論」が提起する論点を整理し、市民社会論の法学版としての「市民法論」が、市民社会形成にとって果たしうる役割と限界について考察する。(2)日本の企業社会のこの間の変容のありようを、企業法・労働法の部会とも連携をとりながら、とりわけドイツにおける企業の変容との比較を通じて把握する。(3)市民社会の担い手の一つとして想定される、市民の自発的アソシエーションあるいは地域中間団体を分析の対象とし、成熟市民社会における共同性のありようを探求する。ここでは「近代」とその法がむしろ否定的に扱ってきた伝統的団体とそこでの規範構造の再評価が行われることになろう。(4)途上国や体制移行国も、日本と同じく成熟市民社会の形成を共通の課題として持つ。日本はこれらの国々に対する法整備支援を展開しているが、それは果たして被支援国の市民社会化に寄与しうるものなのだろうか。一方における法の普遍性と、他方における当該国の歴史的社会的文脈の関係、そこでの法の位置、法の移植可能性をめぐる問題を論じる中で、日本社会の市民社会化に際して、そもそも「法」は、社会構成上の力を持ちうるのかを、改めて考え直してみたい。
 以上を通じて、フィクションとしての「市民社会」「市民法」というカテゴリーに託しうる社会変革力に、具体的なイメージを与えることが、本研究班の目的である。
研究活動
 楜沢能生 笹倉秀夫
 大久保優也
1-4. 新世紀における比較法研究の理論的・実践的課題
 ヨーロッパにおける比較法研究の、ローマ法研究との接点の拡張は、比較法と実定法=解釈法学との関係を緊密にしつつあるように思われるが、各国におけるローマ法継受の差異の構造から、ヨーロッパ法形成と各国法の「アイデンティティ」の関係が理論的にも実践的にも重要な検討課題になりつつある。同時 に、東欧圏を中心としてEUとの関係に研究対象がおよべば、この研究はさらに 独自性を増す。他面、比研創立50周年記念『パンデクテンのゆくえ』国際シン ポがクリアに描き出したように、日本を基軸とした東アジアの法をめぐる立法 の動向を含む課題が、比較法学「先進地域」の西欧との関係において極めて緊 密な連鎖を形づくっていることが明らかとなった。このように立法と解釈のレ ベルで、法的構成における比較と歴史の視点が、かつてないレベルで国際的 な共同研究を要請している。G−COEの基本コンセプトは「成熟市民社会におけ る企業法制」であるが、これは上記の動きの中であらためて全面的な課題とされている「市場」「市民社会」「企業」の諸関係における「理念型」の導出を不可欠としよう。この意味 において、今日、欧米に
発した比較法学の理論的・実践的課題について、アジ アにその検証の場を拡大し、内外の研究者の協力を得て総合的に研究すること によって、比較法研究所の存在意義を示すと共に、G-COEの基軸を構築しよう というのが、このプロジェクトの趣旨であり、目的である。具体的には次のような構成でプロジェクトを推進する。

 A 現代比較法学の論争的課題(仮題)(比研連続講演・ワークショップ)
 B 国際シンポジウム

 Aは、上記の目的について、代表的な日本 の研究者およびご都合のつく海外の研究者をお招きし、分野ごと、国ごと、地域ごとの問題の探求を試みるものである。基本的に連続講演の形式で必要に応じて一部はG-COEとの共催(共同主催)で推進可能とする方向で、比研の所定の手続を開始する。海外の研究者についても若い方を中心にご都合のいいと きに来ていただき講演とともに院生対象のセミナーをお願いすることも検討する(この場合、大学院イニシャティブとの共同を検討する)。Bは、Aプロジェクトを進行させつつ一定の段階で内外の研究者を招聘し具体的総合的なテーマで開催する。これら全体についてG−COEの他の研究チームとも連携しつつ進めるように努力したい。
研究活動
 楜沢能生 小口彦太 中村民雄
 大久保優也

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企業と憲法秩序 企業と憲法秩序

2-1. 憲法と経済秩序
 日本国憲法は、経済秩序に関する明文規定をもたない。もっとも、憲法29条は財産権を保障しているので、資本主義経済を前提とするものと理解されてきてはいる。しかし、ひとくちに資本主義といっても、新古典派的な自由市場を基調とするものから福祉国家的再配分を組み込んだニューディール的な市場経済まで、そのありようは一様ではない。いかなる資本主義を選択するかについて、憲法は明言していないのである。
 この点に関する従来の憲法学の対応は、経済秩序の構築を政策問題とし、法的判断の対象から除外するというものであった。これはしかし、二重の基準論的思考、すなわち討議を通じて経済秩序を構想するという考え方を前提としている。そこには、必ずしも国家の撤退や市場の自由放任までを正当化する意図は含まれていなかった。
 たしかに、憲法は経済秩序のあり方について明言せず、経済政策の当否は法的判断になじみにくい面をもつ。しかしながら、経済秩序は、国のあり方と無関係であるわけではない。その意味で、国の基本構造を定める憲法が経済秩序と無縁であると考えるべき理由はないはずである。
 とはいえ、グローバル化が進展する今日の世界では、一国のみで経済秩序のあり方を構想しても、有効性に欠ける面があることを否定できない。冷戦崩壊後の世界秩序の再編という状況の下で、国民国家の枠組みを前提とする憲法ならびに憲法学が、経済秩序について語り得ることはあるのか。それを考えるためには、主権や人権、平和主義といった日本国憲法の基本原理からの検討が不可欠となるであろう。
 例えば、日本国憲法9条の掲げる平和主義は、経済秩序のあり方を全く制約しないのかどうか。財政均衡の要請は、憲法上の権利保障といかなる関係があるのか。さらには、国家の撤退と憲法、社会保障と経済秩序、地方自治と経済秩序、あるいは憲法と市民社会等々の問題に至るまで、本企画の主題は、経済的自由権論や法人の人権論といった既存の論点にとどまらず、多様な拡がりを持つものである。
研究活動
 中島徹 今関源成 金澤孝
 山本真敬

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企業と市場の民事法 企業と市場の民事法

3-1. 民事法制研究・全般
 従来民事法とりわけ民法は市民法型ルールの提供を第一の使命としてきた。 もとよりその使命の重要性は今後とも揺ぐものではない。 しかし他方で企業ないし市場を支えるような商事的民事法のあり方が真剣に探求されなければならない状況となっている。 市場と不法行為、市場に対する責務の不履行、金融商品の説明義務・適合性原則、市場を経由する消費者・投資家損害の賠償、 金融商品設計に係る民事法の意義、商事信託法制、受託者責任、市場取引の客体たるモノとしての権利、 財団・法人・中間法人・組合といった事業の受け皿法制等々の研究は、主として民法学者に委ねられてきたが、 そこで生じている現象は企業・市場を担い支える民事法という視点を必要とする場合が多い。ある意味では、民法学者はこの限りで商法学者であったとすら言える面がある。 本企画はこうした総合分野を共同研究することによって、新たな学問的地平を切り開こうとするものである。
 新会社法の制定は商法総則・商行為法の位置づけを困難なものとしているが、この部分を民法に移管し、一般社団法人・財団法人を会社法として位置づける等、民法と商法の境界を見直し、再構築する機運も見られつつある。本企画では、そうした観点から従来の民商法を総合する新しい法律学の創造を目指す。
研究活動
 鎌田薫 上村達男
 
3-2. 民商法体系の再構築
 従来民事法とりわけ民法は市民法型ルールの提供を第一の使命としてきた。 もとよりその使命の重要性は今後とも揺ぐものではない。 しかし他方で企業ないし市場を支えるような商事的民事法のあり方が真剣に探求されなければならない状況となっている。 市場と不法行為、市場に対する責務の不履行、金融商品の説明義務・適合性原則、市場を経由する消費者・投資家損害の賠償、 金融商品設計に係る民事法の意義、商事信託法制、受託者責任、市場取引の客体たるモノとしての権利、 財団・法人・中間法人・組合といった事業の受け皿法制等々の研究は、主として民法学者に委ねられてきたが、 そこで生じている現象は企業・市場を担い支える民事法という視点を必要とする場合が多い。ある意味では、民法学者はこの限りで商法学者であったとすら言える面がある。 本企画はこうした総合分野を共同研究することによって、新たな学問的地平を切り開こうとするものである。
 新会社法の制定は商法総則・商行為法の位置づけを困難なものとしているが、この部分を民法に移管し、一般社団法人・財団法人を会社法として位置づける等、民法と商法の境界を見直し、再構築する機運も見られつつある。本企画では、そうした観点から従来の民商法を総合する新しい法律学の創造を目指す。
研究活動  
 鎌田薫 上村達男
 
3-3. 企業と市場と民事責任
 企業活動に対する民事責任法が、新たな役割を担う時期に来ている。近年進められてきた事前規制の緩和によって、事後的な段階で働く不法行為法の制裁的側面が重要になるとともに、事前の救済手段である差止請求の役割が増大している。そこでは、民事責任の機能自体の再考が要請される。同時に、安全性や公正な取引環境の確保の観点から、企業活動に対する適正な規制のあり方が、重要な検討課題となっている。
 安全性や取引の公正性は、すべての取引において前提とされる課題であるが、とりわけ企業と消費者が対峙するとき、この二つが不可欠の現代的要請である。安全性には、生命・身体・財産の安全性だけでなく、平穏な生活環境やプライバシーの保護といった意味も含まれる。取引の公正性には、取引当事者の公正性だけでなく、競争秩序に支えられた健全な取引市場の確保といった意味も含まれる。
 企業と市場と民事責任というテーマを掲げているが、企業活動に対する公法的規制のあり方や、企業と消費者の間における適正な取引ルール、市場ルールの形成といった点の検討が、このテーマを考察する上での不可欠な前提である。これらの課題を含めて、広くこのテーマを扱うことにしたい。
研究活動
 後藤巻則 浦川道太郎
 柳景子
3-4. 企業・市民と土地法制
 企業が市民的基礎に基盤を置くものである以上、企業の土地保有と個人の生活のための土地保有の関係を、欧米のケースを参考に検討することは非常に重要である。とりわけ、コモンズないし社会的共通資本と私的所有の関係を考察することで、公共性と土地所有の制限のあり方に関するとりわけ欧州の発想を十分に理解し、それを日本の土地政策に生かしていくことが必要である。土地政策は、企業間、所有観という基礎法的基盤の上に確立されるべきであろう。
研究活動  
 内田勝一 田山輝明
 
3-5. 市場のグローバル化と担保法制
 サブプライム問題がアメリカの大手金融機関の倒産を招き、世界の資本市場を揺るがしている。この問題の出発点は、アメリカ国内の固有の住宅・不動産担保制度にある。
 これまで、不動産担保制度は、一国の固有の問題とされてきた。しかし、「担保」方法を制度して成立させている基盤は「金融」問題であることを忘れてはならない。そして、金融「市場」というのは、グローバル的性質を有するものであることも注意しなければならない点である。今回の上記問題は、この2つの制度の密接不可分性に対する法的配慮の欠如が露呈したともいえるのである。そうであれば、担保と金融という不可分性に対する再検討と、金融市場が「市場」である以上は競争原理を前提とするが、その適正な競争原理を働かせるべく、政府による適切な市場政策が必要となるところである。
 そこで、われわれは、この経済的な問題を意識しつつ、もう一度、今回の欠点を露呈しまた全世界のグローバルスタンダードになっている欧米の金融担保制度を根本から研究し、21世紀の新たな金融の発展形態に大いに寄与すべき制度を構築する必要があろうと考えている。とりわけ、アメリカUCCの発展方向の模索、EU統一規範の発展方向の模索と参加各国の個別金融事情との関係、欧米のアジア市場へのアプローチの方法などは、必須の研究課題である。
研究活動
 近江幸治
 大沢慎太郎
3-6. 信託法制の比較法研究
 本研究は、信託および信託類似制度に関する法制の比較法研究を通じ、各国の私法に関する基本的な枠組みの理解と英米法のtrustに関する対応から見た法意識調査を展望したものである。また、欧州の周辺・辺境部分や各オフショア法域の法制・法意識を調査研究することで、様々な角度から「ヨーロッパ」の深層に根源的に迫ることを最終的な目的としている。
 主たる対象は以下の三つに分類される。@「欧州を中心とする大陸法諸国における信託類似制度と信託そのものの受容」、A「スコットランド・南アフリカのようないわゆる混合法域(mixed legal system)における信託の受容」、B「オフショア法域における信託法の展開と信託の限界、および抵触法的観点からの他国でのオフショア信託の受容」。
 国際的ジャーナル等、英語による研究成果の国際発信と問題提起を積極的に行う。
研究活動
 渡辺宏之
 韓敬新
3-7. ヒト由来物質をめぐる法的課題
 近代社会においては、生物としてのヒトは等しく出生という事実のみをもって権利の主体として位置づけられる。権利主体としての人は、他人がこれを勝手に処分したり、取引の対象とすることはできない。個体としての人の身体から分離された身体の構成部分や、死亡した人の身体(死体)は人格性を失い、処分の対象となりうるとされてきたが、ただ、その処分の目的と内容は、毛髪など一部のものをのぞいて、埋葬のためであったり、廃棄のためであったり、あるいはせいぜい標本としてのためであったりしたにすぎない。しかし、今日、医学、生物学、生命科学など、自然科学および技術の発展が、人の身体やその構成部分を医療や創薬その他の場面で利用する道を切り開き、それら廃棄や埋葬の対象でしかなかった身体構成部分や死体が有する意義を大きく変化させた。
 現在、人の身体や身体構成部分は大別して三つの形態で利用されてきている。第一は、輸血や臓器移植など、それら組織や臓器の機能をそのまま利用するものであり、精子や卵子を利用した出産などもこの類型に含まれる。第二は、採取された身体部分を原料とし、それに加工をして利用するものである。医薬品や、場合によって化粧品としても利用されているし、さらに現在大きく話題となっている幹細胞(胚性幹細胞にしても、IPSにしても)を樹立し、再生医療に役立てようというのもこの類型に属するであろう。さらに第三の類型は、人のDNAを採取し、そこから諸種の遺伝的情報を取り出して利用しようとするものである。この分野は、いわゆるヒトゲノム解析計画が完了し、ポストゲノム時代を迎えているわれわれの社会において、今後大きく発展するであろう領域である。
 これら諸種の分野とも、その利用の客体はヒト(=人)に由来する物質であるが、その利用の自由度、処分の可能性などについて、法的にそれを正当化する確実な理論形成がなされているわけではない。身体構成部分はいかなる権利の客体か、所有権か、人格権か。その処分は誰が決定できるのか、また取引の対象となるのか。加工された製品、抽出された情報に関する権利は誰にあるのかなど、検討されなければならない問題点は多い。ヒト由来物資の利用は人類の福祉に寄与するところが大きい。そのこと自体は疑いがないが、ことは、近代社会が大きな犠牲の上に掴み取った権利の主体である人そのものにかかわる問題である。本研究は、従来の物権理論だけでも、取引法の理論だけでも、あるいは人格権の理論だけでもない、ヒト由来物質に関する法的理論構成を探ろうとするものである。
研究活動
 岩志和一郎 甲斐克則
 
3-8. 環境を中心とした企業の民事責任と公法上の責任
 環境問題を適切に解決するためには、民事法上および公法の両者からの相補的なアプローチが重要である。本企画では、「(環境を中心とした)企業の民事責任と公法上の責任」というテーマのもとで、民事責任(主に訴訟)を柱として、公法上の責任との関係も踏まえながら、以下に掲げる個別の問題に関わる訴訟および訴訟制度のあり方のほか、責任関係や費用負担について研究・議論を進めることを目的とする。具体的には、企業と排出枠取引、オーフス条約(環境団体訴訟)、環境損害論、土壌汚染の回復、アスベスト・薬害・BSE・水俣問題をめぐる訴訟、などの論点があげられる。また、その際には、国内環境法の個別的な論点にとどまらず、諸外国の法政策との比較を視野に入れた研究を目指す。
研究活動
 大塚直
 二見絵里子 小島恵

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制裁と紛争解決 制裁と紛争解決

4-1. 企業と市場と刑事制裁
 刑事法グループは、21世紀COEの活動の一環として、2004年度に、内閣府経済社会総合研究所の協力も得て、日本企業3,000社を対象とするコンプライアンス・プログラムの実施状況及びその違反行為に対する制裁のあり方に関するアンケート調査を実施し、約1,000社からの回答を得た。この調査結果に基づく国内シンポジウム及び国際シンポジウムを実施した(田口守一=甲斐克則=今井猛嘉=白石賢『企業犯罪とコンプライアンス・プログラム』(2007年4月、商事法務)、甲斐克則=田口守一編『企業活動と刑事規制の国際動向』(2008年3月、信山社)参照)。このような研究を基礎として、日本における企業に対する刑事規制のあり方を研究した(甲斐克則編『企業活動と刑事規制』(2008年5月、日本評論社)参照)。
 グローバルCOEにおける活動も、以上の研究を更に発展させるものであり、2004年度の国内調査に対する追跡調査を2009年度に実施する予定であるとともに、2009年度には、諸外国における企業犯罪の現状とこれに対する刑事制裁のあり方をめぐる国際調査を実施する予定である。これらの研究を実施するために、2008年度から研究体制を強化し、研究会員を国内法研究グループと外国法研究グループに分け、両グループの研究を同時並行で進めることとした。このうち、国際調査については、諸外国における企業犯罪とコンプライアンス・プログラムとの関係に留まらず、さらにその背後に存在する企業文化や市民意識に迫る調査を実施したいと考えている。これらの準備活動はすでに2008年度から始まっている。
研究活動
 田口守一 甲斐克則 曽根威彦
 芥川正洋 辻本淳史 大庭沙織 福山好典
4-2. 企業と市場と紛争解決
 本企画は主として民事法の立場から企業と市場と紛争解決をテーマに研究を行なう。ここでは、刑事法との接点でもある民事制裁、課徴金、懲罰的損害賠償といった制裁手段はもとより、いわゆるADR(裁判外紛争解決手段)の性格と意義、あるいは自主規制機関による規律が有する権威といった多くの問題を検討対象とする。
研究活動  
 加藤哲夫 浦川道太郎
 

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企業と労働・環境 企業と労働・環境

5-1. 労働法における企業概念をめぐる研究
 労働法と企業との間には密接な関係があるが、これまでの労働法理論は、企業を労働契約関係の一方当事者としてしかみることがなく、企業を物的要素(工場・施設など)と人的要素(株主・経営者・労働者・債権者など)から成る全体してみることはなかった。ところが、企業法制の改革によって促進された企業組織の変動は、企業そのものの運命が労働者の命運を決することになることを明らかにした。従来、法律学における企業概念の検討はもっぱら商法学・会社法学に委ねられていたが、こうした中で、労働法学もまた、<労働法にとっての企業概念>の検討の必要性に迫られている。本研究においては、商法学・会社法学のこれまでの研究成果に学び、それらと対話しつつ、労働法学における企業概念の積極的な構築を試み、労働法の基礎理論の再検討にまで至れればと考えている。
研究活動  
 石田眞 島田陽一
 鈴木俊晴
5-2. 企業買収・組織再編と労働
 「株主」が存在感を増している時代、投資ファンドなどによる企業買収とそれに伴う組織再編が労働関係の法的な側面にどのような影響をおよぼすのかは、会社法学のみならず、労働法学の重要な検討課題である。具体的には、従来の労働法学が議論の対象にすらしなかった「株主」や「企業価値」を「労働」との関連で議論しようとするのが、本研究の趣旨である。企業法制の変遷の中で、どのような株主の、どのような行動が、「労働」の観点からみてどのような問題を惹起させるのかを捉えることがまず必要であり、かかる問題の検討を、労働法学と会社法学の共同研究として実現したいと考えている。
研究活動  
 石田眞 島田陽一 上村達男
 鈴木俊晴
5-3. 企業・市民社会と新たな社会法
 戦後以来のわが国の成長・繁栄を支えてきた経済・社会システムが閉塞状況に陥る中、規制改革などの構造改革に向けた国家的取組がなされてきた。しかし他方、「格差社会の到来」「貧困の拡大」といった言葉に象徴されるように、そうした構造改革の下でともすれば置き去りにされがちないわゆる社会的弱者への不十分な政策的対応のあり方に対しても、焦点が当てられつつある。
 本企画では、こうした日本社会のおかれた現状に対し、「社会法」の視点から取り組むことをねらいとしている。戦後、労働法学から次第に社会保障法学が分化し、学問的にも研究者の層としても、相対的に独立した感のある二つの法分野ではあるが、非正規雇用、ワーキングプアなど、今こそ労働と社会保障の両面から統合的にアプローチすることが求められる時代に至ったといわねばならない。ここに新たな「社会法学」の構築の必要性が認められると同時に、その基盤となる新たな「社会権」をめぐる議論の展開が大きな学問的課題である。
 本企画では、こうした課題に本格的に取り組む前段階として、今年度、法学研究者以外の第一線の日本人研究者を招へいし、「貧困の拡大とセーフティネットの役割〜格差社会における社会法の再構築〜」と題して、シンポジウム形式の研究会を2009年1月17日(土)午後に予定している。
研究活動
 菊池馨実 浅倉むつ子 石田眞 島田陽一
 鈴木俊晴
5-4. 地球環境問題と企業の責任
 今日の地球環境問題に関しては、日本のみならず諸外国においても企業活動に環境配慮が求められるようになっている。また環境に関する法制度は変化が早く、例えばEUでは新しい指令の制定や既存の指令の改正が毎年数多く行われており、企業はそれら法制度の動きに対応するよう求められている。
 当研究においては、世界の法制度、とりわけEU・アメリカの法制度や種々の国際条約を素材としつつ、それらを根拠付ける概念となりつつある「予防原則」、「原因者負担原則」、「将来配慮」、「持続可能な発展」といった環境法の諸原則や「リスク管理」を中心とした検討を進めていく。特に「予防原則」については前年度までのCOEでも検討を重ねてきているが、まだ残された論点は多く、例えば証明責任の転換、予防原則の統制原理、訴訟への影響、他の諸原則との関係など、検討すべき課題は多い。さらに、例えばドイツでは上記の諸原則を具体化し環境法制の基礎をなすドイツ環境法典の検討が進んでいる。当研究ではこれら諸概念が、国際条約及び各国の法制度における化学物質、気候変動、自然保護、遺伝子改変生物等といった各分野でどのように適用されているかを整理しその理論的検討を行っていく。
研究活動
 大塚直
 二見絵里子 小島恵

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金融・資本市場と法 金融・資本市場と法

6- 1. 金融・資本市場法・全般
 日本の金融・資本市場法制のあり方を総合的に研究する中核的な研究グループであり、 他の企画で吸収できない問題を総合的に扱う。 もとより企業資本市場法制関係の各論的な研究グループと一体となって研究を推進する。 ここでは金融審議会等での議論を検証し、場合により対案を提示する。重要なパブリックコメントに応える。 万事、政府からの諮問を受けないと審議できない現状を乗り越える努力を行い、 たとえば金融法制を横断的・包括的に再構成する日本版金融サービス市場法の提案、 その他の制度改革提案のための研究を行う。 また、日本取締役協会の公開企業法委員会において策定した公開株式会社法要綱案は、資本市場の法としての公開株式会社の意義を明らかにするものとして、その実現へ向けた理論研究を推進していく。あるいは、証券取引所規範の意義、証券取引所による公開会社法制の確立に関する問題、その他トピック的な問題も取り上げていく。 欧米の企業・市場に関する調査研究グループとの共同研究が実施している。中国全人代法制工作委員会との研究協定の覚書、中国証券管理監督委員会と東証との三者による研究交流協定がすでに締結されており、中国側から多大な評価を得ているが、こうした活動をさらに推進していく。
研究活動
 上村達男 若林泰伸
 金賢仙 韓敬新 金セイ 李敏 李ビョウ 諸秀艶
6- 2. 金融・資本市場法制のグランドデザイン
 われわれの第一期の研究提言内容がその策定過程にいささかなりと前向きの影響を与えたと考えられる2007年の金融商品取引法の施行は、日本にとって重要な前進ではあったが、最終的に目指すべき法規制システムの体系からすれば、一里塚であってゴールとはいえない。市場の法規制システムのインフラ整備・高度化を適切に行い、市場に参加する市民とユーザーの側に立ったデザインに抜本的に変えていく必要がある。現状を踏まえつつ、金融資本市場法制をさらに機能横断的かつ包括的に再構成した、柔構造の日本版金融サービス市場法規制システムのグランドデザインの提案を、よりわかりやすく、実現可能性の高いプロセスの提示と共に、行いたい。
研究活動  
 犬飼重仁 上村達男
 韓敬新 金セイ 李敏 李ビョウ 諸秀艶
6- 3. 金融ADR・オンブズマン制度研究
 個人などの金融に関する苦情・紛争の解決は、日本では裁判以外に、業界型金融ADR、裁判所の調停、行政型の国民生活センターや消費生活センターなどがあるが、問題を抱えた個人はどこに行けばよいか分からずどこかに相談に行っても必ずしも実効的な解決には結びつかない。簡易・迅速性・柔軟性・費用の低廉性等の観点から、比較的小額の金融トラブルについては、消費者は裁判制度を選択しづらく、それに代わる実効的な選択肢として、第三者型の、公正でアクセスしやすい、包括的で機能横断的な金融専門ADRによる紛争解決を可能とすべきであるが、そういう優れた制度が日本にはまだなく、民主導での新たな制度創設提案への期待が高まりつつある。2007年春に立ち上げられた、日本にふさわしい金融ADR・オンブズマン制度の提言を行うための独立の任意団体である「金融ADR・オンブズマン研究会」では、早稲田GCOE関係者も参加して、自主的に研究を進めている。早稲田グローバルCOEでは、この研究会メンバーおよびADR関係者など世界各国の専門家と交流・協調し、相互補完的に研究を推進していく。また同時に、その制度の背景にあるべき、ISO(JIS)の苦情対応・紛争解決システムの国際規格に関する研究も並行して行う。
研究活動
 犬飼重仁 
 韓敬新 金セイ 李敏 李ビョウ 諸秀艶
6- 4. アジア資本市場法制研究
 2007年6月に設立された「アジア資本市場協議会(CMAA: Capital Markets Association for Asia, 会長 出井伸之氏, 代表兼事務局長 犬飼重仁)」では、早稲田GCOE関係者も参加し、日本とアジアの資本市場実務家や研究者が集まりアジア資本市場についての議論を行いつつある。今後、早稲田GCOEとCMAAは相互協力し、日本とアジアに共通する資本市場の法規制システム・自主ルール等に関する研究を継続的に行う。「アジア共通の資本市場」に関する議論のポイントは、市場関係者の間でさえまだ共有されてはいない。アジア各国は通貨自体バラバラで為替管理も関連税制も各国国内の開示規制も共通の土俵は見つけにくい。しかし、1997-98年のアジア金融危機以来、アジアの主要各国は各国政府や中央銀行などの尽力で危機の再発を防ぐための協力関係を築いてきた。10年を経て米国発の金融危機に世界が直面している現在、日本とアジアの研究者と市場実務家が、アジア共通の資本市場という視点を共有し、各国国内規制の枠組を超えてアジア共通資本市場に適用されるべき自主規制ルールのフレームワークなど市場インフラの議論を行うことには大きな意味がある。早稲田GCOEはCMAAと共に、ユーロ市場のプロの市場参加者のための自主規制のルールとリコメンデーションを構築しているICMAなどとの交流を深め、アジア共通の資本市場に適用可能な、「早稲田版CMAAルールブック」の策定に向けた研究を行う。
研究活動
 犬飼重仁
 韓敬新 金セイ 李敏 李ビョウ 諸秀艶
6- 5. 金融プリンシプルに関する総合研究
 「主義、原則」と訳されるプリンシプルは、あらゆる組織、企業団体、個人が、新たに行動を始める時に、その行動のベースとなる指針、あるいは迷った時あるいは困難に遭遇した時、ないし失敗した時に、立ち返る原点をわかりやすく示したものである。それは、当事者にとって絶対であり批判の対象とすることのできない基本中の基本であり、揺らぐことのない、譲ることのできない、筋、背骨、哲学、理念、行動規範(Code of Conduct)といえる。金融資本市場法制のグランドデザインや、市場参加者(業者・調達者・投資家・規制機関等)の行動規範を考えるに際しても、日本のあるべき金融ADR機関の制度創設の理念を考えるに際しても、日本とアジアの資本市場の自主規制のあり方を考える場合にも、プリンシプルについての深い洞察と研究が欠かせない。しかし、現在の日本の困難は、市場に参加する各主体の行動の背後にある原則や行動規範が、かなりの程度、本体の目的・趣旨や本来あるべきプリンシプルからかけ離れてしまっていることと、それ自体が必ずしも明確でなく、多くの場合、わかりやすい言葉で表現され共通言語として広く共有されてはいないことにある。欧州(英国・EU)における蓄積(プリンシプルとそれらに基づいて構築されたISO規格など)や米国での関連の議論等に学びつつ、早稲田GCOEならではの金融プリンシプルに関する総合的な研究を実施する。
研究活動  
 犬飼重仁 上村達男
 韓敬新 金セイ 李敏 李ビョウ 諸秀艶
6- 6. ファンド法の総合研究
 今日、金融分野、企業法制分野においてファンドの存在感はきわめて大きなものとなっている。本企画は、特定少数者のために巨額な資産を運用するファンドにより、欧米がこだわってきたはずの個人や市民重視の企業法制、金融法制の崩壊をもたらし、これを単純に放置することで欧米的価値観や市民社会の合意ないし歴史的規範意識が崩れていくのではないかという観点も重要ではないかと考えている。特に匿名性の大株主という概念に対して欧米がどのような対応をしているのか、といった問題は日本のファンド法研究にとって重要な意義を有するであろう。生身の個人を代表する労働組合、連合がこの問題に関心を持ち出していることの意味も検討していくべきであろう。
研究活動  
 上村達男
 韓敬新 金セイ 李敏 李ビョウ 諸秀艶
6- 7. 金融商品取引法・アメリカ資本市場法制研究
 金融商品取引法は、企業の資金調達と国民の資産運用に資するため、上場会社、投資者、これらを仲介する業者(金融商品取引業者)の関係を規律する法であり、企業と市民社会とを結ぶ重要な役割を担っている。同法の内容は、ディスクロージャー(開示規制)、不公正取引規制(市場規制)、業者規制から成るが、近時、業者規制に大きな改正が加えられた。また、同法は、アメリカの証券諸法を母法とし、その影響を受けつつ度重なる改正を経た証券取引法を、EU法の動向をも参照して抜本的に改正して2006年に成立したものである。そこで本企画では、研究会を組織して、金融商品取引法の内容を、アメリカ法の展開をも参照しつつ、とくに企業行動をいかに規律すべきかという観点から研究するものである。
<ディスクロージャー>
 近年、ディスクロージャー違反を理由として投資者が上場会社やその役員の民事責任を追及する訴訟が増加しており、判例法の形成により企業行動に大きな影響を及ぼすものと予想される。そこで、アメリカの判例研究、わが国の判例研究を通じて、開示規制による企業行動の規律を研究対象とする。
<不公正取引規制>
 相場操縦の禁止やインサイダー取引の禁止は、市場におけるプレーヤーである上場会社、投資者(個人投資家および機関投資家)、金融商品取引業者の行動に大きな影響を与えている。不公正取引規制は、2006年改正時に、唯一大きな改正が行われなかった分野であり、不公正取引のあり方を検討することは、金融商品取引法の次の改正のための重要な準備作業になる。また、金融商品取引所や金融商品取引業協会による企業や業者の行動の規律に展開がみられ、今後、その重要性が増すと考えられるため、これらの自主規制機関による自主規制も研究の対象に含める。
<業者規制>
 業者規制には、業者と顧客の関係を規律する私法的側面と、業者と国の関係を規律する行政法的側面がある。本企画では、グローバル化が進む金融・投資の分野において重要性を増している後者の側面に着目して、アメリカ、EUにおける業者規制の進展のみならず、東アジア近隣諸国の業者規制(日本法を参考とした展開がみられる)と比較しつつ、業者規制のあり方を研究する。
研究活動
 黒沼悦郎
 金賢仙 李敏 李ビョウ
6- 8. デリバティブ取引の総合研究
<北欧法>
 ノルディック三国を含む北ヨーロッパの企業法制を中心に、その法制度を支える文化的・歴史的背景などをも視野に入れつつ、近年世界的に注目されているこの地域の、経済的・法律的側面を探求する。
<デリバティブ>
 近年、急速に進展したデリバティブを対象にして、これに対するあるべき法制度を探求する。特にこの領域は、経済的ニーズ・実務の創意工夫が先行するため、実態把握が困難な場合が少なくなく、また法制度が後追いになるケースも多い。そのような現代型金融商品・金融商品取引に対して伝統的な法原理をいかに適用・展開していくのか、新たな法原理を創出する必要があるかなどの法的研究の必要性が求められているとの認識のもと、同じ問題を共有すると考えられる比較法的研究を含めて、このプロジェクトが幅広い学識・経験を結集する場となることが期待される。
研究活動  
 尾崎安央
 
6- 9. 保険契約法・保険業法研究
 社会情勢に対応すべく約100年ぶりに保険契約法が全面的に改正され、商法から独立して単行法として制定された。この間、生損保各社のいわゆる保険金不払い問題が社会的に大きく採り上げられ、多くの議論を生み出した。本研究部門では、このような多くの問題を内在する保険法¥保険業法について、研究者、弁護士、保険実務家の方々のご参加を得て、生損保両分野にわたる保険契約法・保険業法、および保険約款の解釈をめぐる裁判例を素材として、理論と実務の架橋を目指した総合判例研究を行うとともに、わが国の保険契約法理が多くの影響を受けている欧米諸国とも連携を図り、より広く深みを持った研究を行うことを目的としている。
研究活動  
 大塚英明
 
6-10. 企業・金融法制研修所構想*法曹、専門家再教育
 法化社会や法科大学院構想の起動力は、大幅な規制緩和、自由化によって大幅に紛争が増大するものと予想された企業、金融・資本市場分野にあったはずである。しかし、法科大学院をはじめとしてその設立に当たって最大の専門家とされたのは法哲学、憲法といった分野の専門家であり、企業、金融・資本市場分野への関心は小さなものであった。また、この分野は司法研修所が対応してこなかった分野である。法科大学院はしかし司法研修所的発想が色濃いものとなっている。この企画は、法務教育研究センターとの合同企画として、ロースクールOBや法曹一般に対して、あらゆる機関や部門から独立する企業、金融・資本市場法制に関する研究機関として、あえて民間企業・金融法制司法研修所構想が必要なのではないかという視点に基づくものである。ただし、身の丈に過ぎた構想でもあり、しばらくは未定とせざるをえない。
研究活動  
 上村達男 鎌田薫 法務センター
 

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企業法制−理論・立法・解釈− 企業法制−理論・立法・解釈−

7-1. 企業法制研究・全般
 以下の各企画外の企業法制全般について担当する。重要判例研究や会社法解釈問題、立法提言、緊急シンポジウム等によるシンクタンク機能を担う。また、各企画責任者以外の担当者、拠点形成者によるトピック的な企画をも担うことになる。また、本研究拠点の全体シンポジウムそのたの横断的な企画も担うことになる。
研究活動
 上村達男
 金賢仙 韓敬新 金セイ 李敏 李ビョウ 諸秀艶
7-2. 早稲田版企業買収ルール研究
 本研究は21世紀COEの段階から行い、研究所の第一期の成果の最終報告となった2008年1月の「問題提起型シンポジウム」にて報告を行い、すでに各省庁をはじめ大きな注目を浴びるに至っているものである。GCOEにおいては、さらに具体的な制度作りへ向けて研究を進めていく。本プロジェクトにおいては、英国の企業買収規制に範を取った「日本版企業買収ルール」案の作成を行い、併せて「日本版テイクオーバー・パネル」創設に関する叩き台を作成する。一方で、欧州を中心とした各国の企業買収規制の調査とヒアリングを行い、欧米各国の会社法・資本市場法の類似点と相違点の解明を視野に入れた研究を行う。
研究活動  
 渡辺宏之 上村達男 河村賢治
 韓敬新 金セイ 李敏 李ビョウ 諸秀艶
7-3. フランス企業法制研究
 欧州の中でも、ローマ法および中世における先進商業国家であったイタリアの伝統を直接に引き継ぎ、 現在でも、いうまでもなくドイツとともにヨーロッパの中心を占めているフランス法を対象にすることで、 ローマ法以来の法の伝統を背景にしながら、今後のEUの展開という将来も見据えて、企業というものの法的な捉え方、 あるいは企業をめぐる法のあり方を、いわば多面的、立体的に検討する。研究対象は、会社法、商取引法などの伝統的な商法の視点だけではなく、 競争法、資本市場法、銀行法または金融法をも含めた広い意味での企業法制全般とし、企業法制の前提になる民法、および、法人のあり方を規定する憲法からの視点も検討の対象とする。 啓蒙思想と人権宣言、市民革命の地、フランスで企業社会と市民社会は思想的にどのような調和を保っているのか、 法令の形をとらない見えざる企業社会の規範意識は何か、企業社会でのフランス的こだわりは何を尊重するものなのか、 本COE企画の問題意識にとって有益な貢献をすることができると考えている。
研究活動
 鳥山恭一
 白沢拓矢
7-4. ドイツ・EU企業法制研究
 明治時代以降の日本の法制度は、ヨーロッパ大陸の国、とくにドイツの法制度の影響を受けて整備された。第二次大戦後は、アメリカ合州国の法制度の影響を強く受けている。しかし、アメリカ合州国だけを手本にすることには問題があり、その弊害も現れている。ソヴィエト連邦が崩壊した後、旧東ヨーロッパの国の多くがEUに加盟したことによって、ヨーロッパの地理的中心は東へ移動した。その結果、地政学的にもドイツは重要な位置を占めることになった。もっとも、ドイツはEUの構成国であるので、EU法の影響を受ける。EUは、とくに経済のグローバル化および情報通信技術の発達に適合させるために、27カ国の英知を結集して法制度も整備しつつある。それを研究することは大いに有益である。本グループは、会社法(労働者参加法制を含む)、資本市場法およびヨーロッパ裁判所の判決を対象に、経済的・社会的な実態にも注目しつつ研究する予定である。
研究活動
 正井章筰
 
7-5. 企業行動に関与する専門職の実証研究
 本研究チームでは、COE企画として、企業行動の合法性を確保するうえでの弁護士の役割に関する研究を実施してきた。その最近の活動は、企業行動に関与する弁護士と公認会計士の専門職責任のあり方を検討した2007年1月13日のシンポジウム(季刊企業と法創造4巻2号59頁以下を参照)である。GCOE企画としては、まず本年12月に、同一のテーマで日米比較を行うシンポジウムを開催し、その成果を公表することによって、これまでの活動の集大成としたい。
 来年度からは、我が国においても企業法務専門弁護士が急速に成長しつつあることを踏まえて、その実態を把握する調査プロジェクトを実施したいと考えている。そのため、チームのメンバーも再編成する予定である。その実証的基盤の上に立って、我が国の企業法務専門弁護士のあるべき将来像を検討したいと考えている。
研究活動
 宮沢節生
 
7-6. 次世代倒産法制研究
 世界的な経済産業の構造的な変化に伴い、企業倒産法制、すなわち危機企業に関するリストラクチャリング・ルールをより効率的かつ経済実態に即して制度設計し運用することは必須である。前COEでは、倒産制度が企業理論、ファイナンス論の立場から見て自由な取引を制約していないかという検地から、産業再生機構、わが国における倒産法制の歴史、米国のチャプター11とそれを批判する学説(BAHMモデル)について検討を行った。本COEでは、その成果をまとめつつ、担保のあり方など関連領域にも問題を広げ、研究グループ内での討論を深め、外部の有識者の意見も踏まえて、次世代倒産法制を考えるための視座を明らかにしてゆく。
研究活動  
 岩村充 長野聡
 

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アジア企業法制、金融資本市場法制 アジア企業法制、金融資本市場法制

8-1. アジア統一民商事法制研究
 アジア各国の法律(私法)は、19世紀に開花したヨーロッパ大陸法の影響を強く受け、その法体系を継受した。 しかし、アジアといっても、国によって独自の文化を持ち、それが多彩な形で法律関係に影響を与えている。 このため、統一的な規範というものを考えることができなかった。 しかし、21世紀の「アジアの時代」において、経済的ないし文化的交流が活発化していることに伴って、取引法に関する統一的規範の形成は、今や喫緊の課題となっている。 そこで、これまで、日韓間・日中間において培ってきた学術交流の関係を基盤として、 新たに3国間の民商事法制に関する「アジア法研究拠点」を形成し、 「アジア取引法の統一的規範と統一的解釈の可能性」を探ることを目的とする。
 また、企業と市場に係る総合法領域が一体となって研究活動を行うことは、 これから本格的に企業と市場に潜む諸問題に直面するであろうアジア諸国にとって、 もっとも有益な知見を提供しうるように思われる。本企画はこうした視点から、 企業・市場法制に関して、日中韓の各国との間に学問交流を活発化させている。
研究活動
 近江幸治 田山輝明
 大沢慎太郎
8-2. 総合海法研究と東アジア法制
 海事に関する領域では、国際条約・国際的慣習などによる統一的な規範が広く存在している。たとえば国際海上物品運送の分野では、現在、国際連合を舞台として新しい条約の制定が検討されているなど、海事に関する国際的な法規範には絶え間ない変化がみられている。そうした中で、日・中・韓(日・韓・中)を中心とした東アジア経済圏の発展はめざましく、国際的法規範の東アジアにおける解釈・運用の統一的理解の必要性が高まってきている。この企画では、こうした認識に基づいて、東アジアを中心とする諸外国の研究者と連携しつつ、海事に関する研究協力を推進していくことを目的とする。 なお、わが国では、海法という法分野の実質的な存在は否定的ないし消極的に捉えられてきており、たとえば海商法は商法の一部門、海上保険法は保険法の一部門、船員労働法は労働法の一部門、海事国際私法は国際私法の一部門というように、分断的に扱われてきている。しかもそれぞれが各分野において小さな一部門となっている。早稲田大学では、海法を総合海法として横断的に捉えようと発足した海法研究所があり、この企画は海法研究所との実質的な連携を図りながら展開していきたい。
研究活動
 箱井崇史
 張秀娟

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ロシア・東欧・スカンジナビアの企業社会と法 ロシア・東欧・スカンジナビアの企業社会と法

9-1. 北欧法における企業と社会
 EU先進諸国の企業法制度の研究といえば、どうしても英米独仏を中心としたものになりがちである。 しかし、ノキアの例もあるように、ノルウエーやスウェーデンのような北欧諸国も世界的企業を抱える先進工業国であり、 またシェルやフィリップスなどを抱えるオランダ(近時、航空業界の統合の動きも報道された)を含むいわゆるベネルックス三国、 エストニアなどのバルト三国、そしてその北海・バルト海周辺国の接合部たる要衝に位置するデンマークなど、 いわゆる北ヨーロッパの企業社会と法制度に関する研究は、わが国ではかならずしも十分でなかったように思われる。 特に、スカンジナビア法制と呼ばれるスウェーデンなどの法制度は、 その「利益衡量法学」を支える文化ともども研究しなければならない法領域であると考えられる。 またドイツ法的でありながらアングロ・サクソン族の故地であったことを思い出させる法制度を有するオランダ、 そしてデンマーク法制(旧領土であるアイスランド法も含め)は、対岸のイギリス法との比較研究も可能であろうかと思われる。 EU法の一部ではあるが、独自の法領域として、北ヨーロッパに焦点を絞った研究グループを立ち上げ、 企業社会と市民社会がどのように共存しうるか、というCOE拠点の問題意識に迫る研究活動を行っている。
研究活動
 尾崎安央 松澤伸
 
9-2. ロシア・東欧における企業と社会
 早稲田大学関係のロシア・東欧法の専門家を活用し、ロシア・東欧における企業と社会の関係について随時研究活動を実施する。21世紀COEにおいて、ロシア最高商事法裁判所長官との研究交流を行なったことを踏まえて、またロシア法の専門家であるロンドン大学教授の小田博氏が我々の研究所の客員教授であることもあり、この分野を開拓しうる人的資源と知識の蓄積が存在している。
研究活動
 小田博
 

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日本の企業法情報海外発信システム 日本の企業法情報海外発信システム

10-1. 日本の企業法情報海外発信システム
 日本の法律学の学問水準は相当に高く、とりわけ外国法を研究し続けてきた日本の法律学には欧米諸国にとっても示唆するところの多い業績が蓄積されている。しかし、そうした日本の様々な法情報が海外に発信されることが少ないため、英連邦の法制が支配しているものの独自の法文化をもたない国による情報発信の後塵を拝しているかの様相が呈されることは甚だ遺憾である。本研究所では、若手研究者を中心に専門分野に関するトピックを定期的に英語で情報発信を行なう基地を構築したいと考えている。これには比較法研究所が蓄積してきたノウハウを十分に活用することができる。しかし、まだシステム構築のための準備段階である。
研究活動  
 上村達男
 

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知的財産法制研究センター 知的財産法制研究センター

B-1. 知財判例データベース・知財理論研究
(1) アジア知財判例英訳DBの欧州判例の追加による発展的構築、日本・アジアにおけるコモンロー系・大陸法系継受の影響と知財法制の研究
21世紀COEの知財部門(RCLIP)で構築してきた中国、韓国、台湾、インドネシア、タイ、ベトナム及びインドを対象国とするアジア知財判例英訳DBは、アジア各国法制度の原点である英独仏伊の知財判例を追加し、知財判例DBへと発展した。これを基に、コモンロー圏・大陸法圏間の相違及び近年の国際調和の傾向を調査研究し、特にEU指令採択後の欧州を参考に、アジア各国における知的財産法制の継受、権利行使調和や今後の法制のあり方について検討を加える。また、アジア各国についても引き続き毎年新判例を追加補充している。インド以外のアジア・オセアニアの英語国をも収録対象に加え、もしくは既存の英語知財判例DBとのリンク化を図っていく。成果の発信のため、各国の講師を招聘して収録判例を素材とした対象国ごとの個別セミナーを実施し、参加者とも広く意見交換を行っている。
(2) 学識経験者との意見交換と知財法制への提言
 知財判例英訳DBの対象国各国から講師を招聘したシンポジウムや研究会を日本で行うとともに、アジア主要国のリーダー的研究機関大学と共催で、現地で学者・法曹関係者と、(1)の成果を踏まえ、日本の過去の経験から経済発展における知財の役割や現状の論点につき意見交換を行っている。最終的には(1)と(2)の研究の成果として、あるべき知財法制の提言を世界に発信していく。
(3) トランスナショナル知財セミナーの実施
 グローバルCOEでも若手研究者の育成は主要なテーマであり、政策・理論・実務という3本立てのセミナーをアジア、欧州、米国と場所を移して行っている。知財判例DB
に収録された判例を素材に、各国協力研究機関の若手研究者による研究報告会及びアジア、米国、欧州の裁判官による模擬裁判を行う。これにより、広く学生一般に知財法の争点を比較法的に理解してもらうとともに、裁判官にも他国の制度を知る機会を与え、国際調和のきっかけとしてもらう。
(4)ニュースレター、Webでの情報発信による情報の共有化
 RCLIPでは年4回日本語・英語でニュースレターを発行し活動状況の報告を行い、またWebでも同様の情報発信を行ってきた。グローバルCOEで格段に豊富化した企画に応じて、これらの情報発信はさらに頻繁かつ充実させて継続し、情報の共有化を図っている。
研究活動
 高林龍
 小川明子 志賀典之 五味飛鳥 石飛 陳柏均
B-2. 国際取引法と知財法制
 WTO/TRIPs成立後、知的財産権の保護水準に関する諸国の規定の調整と調和が飛躍的に進んだことは否定することができない。しかし、各国の知的財産に関するその他の実質法規定をみると各国の産業政策や文化政策の相違を反映して異なることが多く、権利の実効的行使の点については残された問題点が多い。
 そこで、知的財産権の国際的保護を強化するための一方法として、国際裁判管轄権、準拠法、判決の承認・執行を含む知的財産権に関する国際私法の共通原則を探求しようとする研究プロジェクトが見られる。一方では、アメリカ法律協会(ALIと略する)は、2002年4月から「国境を越えた知的財産紛争に関する裁判管轄、法選択及び判決にチェ起用される原則」を独自のプロジェクトとして認め、ニューヨーク大学のRuchelle C. Dreyfuss教授やコロンビア大学のJame C. Ginsburg教授を中心に作業を進め、2007年5月14日のALI総会で採択され、2008年6月にその内容が出版されている。他方では、ドイツのマックスプランク財団は、2001年にマックスプランク無体財産研究所で形成された作業グループを発展させて、2005年に戦略的プロジェクトの一つとして同様な問題についてヨーロッパの側からの草案をまとめる作業を開始した。
 私たちの研究は、2004年2月の日本と韓国の国際私法・知的財産法の研究者を中心とした国際シンポジュウムを契機として、これら二つのプロジェクトの成果を踏まえながら、さらに中国の国際私法学会とも協力しながら東アジアの視点から知的財産権に関する国際私法上の共通原則を探求してきた。そして、今後は、これらの研究で明らかにすることができる共通原則を基礎としながら、東アジアにおける技術移転制度構築にかかわる法技術的問題を研究することを目指している。
研究活動
 
 崔紹明 金知萬

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企業・会計システム研究センター 企業・会計システム研究センター

C-1. 企業統治の経済分析
 21世紀における企業社会のあり方を考えるにあたっては、企業とそれをとりまく様々な構成員(株主、従業員、取引先、顧客、地域社会など)の行動とその関係(コーポレート・ガバナンス)を考察することが不可欠である。そして、より有効なコーポレート・ガバナンスが実現されるためには、いかなる法が必要となるのかも検討されなければならない。さらに、これらの考察を通じて日本の企業社会にとって必要な制度構築の視点を提示するために、各国の文化的、歴史的背景を十分に考慮した上で、市民社会で企業が果たすべき役割は何か、そしてそれは国ごとにどう違うのかを探求することが必要となる。その意味で、本研究の方法は、本拠点の1つの特徴「市民社会のあり方、その背景にある思想や歴史、哲学をも対象とする掘り下げた研究を行い、それを踏まえてあるべき姿を探求する」にそったものである。各国の文化、歴史、慣習を考慮に入れた、アメリカ型ではないコーポレート・ガバナンスのモデルを世界に向けて提唱する社会的意義はきわめて大きいと考えられる。
 こういった観点から、本プロジェクトでは、日本企業における企業統治構造と、企業行動、パフォーマンスの関係を経済学、企業金融の立場から、実証的に分析し、今後の望ましい企業法制・資本市場法制のあり方について経済学や企業金融論からのインプリケーションを提示する。具体的には、変貌する日本企業の統治構造の実態を明らかにし、その特性が企業業績や企業行動に与える影響について包括的に分析することを目的とする。以上の目的意識に立って、「企業統治の経済分析」班は企業データベースの整備、データベースを活用した実証分析を中心に進める。
研究活動
 宮島英昭 久保克行 広田真一 蟻川靖浩
 高原康太郎
C-2. 企業活動の変容と開示・会計・監査・内部統制
T 「国際財務報告基準の概念フレームワーク」
グローバル化が進む世界の資本市場の中で、会計基準の国際的なconvergenceは最重要課題の一つになっている。しかしそのあり方は、世界各国で必ずしも一様ではない。資本市場のグローバル化と国内市場の規律とのバランスを保ちながら、社会規範としての会計基準を経済社会の変化に対応させてメンテナンスしていくことは、そうたやすいことではなく、特に、国内の会社法や税法との関係を無視することはできないが、今後、会計基準のconvergenceという世界的なうねり(風潮)の中で国際財務報告基準(IFRS)を国内基準として採用する国は間違いなく増加するであろう。
経済社会の変化に合せてIFRSを策定し、改定していく作業プロセスにおいて何よりも強く求められるのは、堅固なdue processである。ここにおいて、各国の政治的な思惑を超越して中心的な役割を果たしうるのは、会計の概念フレームワークに関する世界的なコンセンサスをおいて他ならず、本研究では、以上のような問題意識に基づいて、次の3つの作業を中心にプロジェクトを進める。@世界各国のIFRSの適用実態に関する正確な情報を収集、AIASBの概念フレームワーク・プロジェクトの成果ならびに近年のIFRSを幅広くタイムリーに情報収集、B上記Aの情報を相対化して分析する作業を通じ、現代会計の基底に横たわる概念フレームワークを明らかにする。
U 「会計測定の基礎」
上記Tのテーマを研究する際には、会計制度とは距離を置いた会計における「認識と測定」の本質的な意味を明らかにする研究が欠かせない。なぜなら、この研究成果を座標軸としてはじめてIFRSならびにそこに通底する概念フレームワークを相対化して捉えることが可能になるからである。

「監査における懐疑主義の研究」(Professional Skepticism in Auditing)
 「どのように監査を実施すれば、経営者による不正な財務報告を監査人は検出することができるのか」というテーマが、監査人の役割・監査人の責任と関連して、非常に基本的な問題として浮上している。この問題の背後に存在する基本問題、これが懐疑主義である。監査における懐疑主義とは、監査人の心の問題や姿勢に過ぎないのか、それとも、監査判断に関する基本的な枠組みを内包するものであるのか。このテーマを継続的に取り組み、日本公認会計士協会・監査法人の協力を求めつつ、最終的に共同の研究成果を公表したい。
研究活動
 辻山栄子 鳥羽至英 川村義則
 
C-3. 知財とイノベーション
 価値を創出するための知財マネジメントが新たな局面を迎えている。技術の高度化と複雑化により開発コストが高騰する一方で、製品ライフサイクルは短期化している。研究開発費の伸び率が売り上げの伸び率を上回るような事態も発生しており、開発コストを回収するビジネスモデルの確立が急務である。
 そこで求められるのが、オープンイノベーションの発想である。従来のクローズド型の仕組みでは、研究開発から製品化・販売まですべて自前主義で行うのが通常である。しかし、この仕組みでは当該企業のビジネスモデルに適合しない技術や知財の多くは未活用のまま放置されてしまう。これは社会的損失でもある。むしろ、他社へライセンスしたり、スピンオフして分離したり、あるいは売却するなどして戦略的に活用すべきである。
 このような問題は製造業に限ったものではない。コンテンツ産業でも、日本で開発されたキャラクターが米国などで映画化されているが正当なリターンを獲得しているとはいい難い。従来の垂直統合型の価値創造・獲得の仕組みを見直し、知財が有効に活用されるような制度や仕組み(知財の評価、知財の仲介市場)を構築すべきである。経営分野の研究グループとしては、知財の活用を念頭に置いた制度設計に何らかのインプリケーションを導きたいと考えている。
研究活動  
 藤田誠 井上達彦 谷口真美
 吉澤昭人
C-4. 日本の企業統治:歴史的パースペクティブ
 本プロジェクトの目的は、21世紀COEプログラムの成果を継承しつつ、1900年から現在までの約1世紀にわたる日本企業の企業統治構造と企業行動およびパフォーマンスの関係についてさらに高いレベルの実証分析を行い、これからの日本の企業法制と資本市場法制のあり方について経済学的により深いインプリケーションを提示することである。
 21世紀COEプログラムにおいては、今後の日本の望ましい制度設計の展望を目的に、企業法制・資本市場法制と企業行動の関係に関する実証分析、具体的には『早稲田大学長期マイクロデータベース』を用いた日本の投資家保護法制の歴史的展開、株主所有構造と企業パフォーマンス、戦前期日本における企業統治の特性とその有効性、さらに前プログラムの最終年度から構築が始まった『早稲田大学長期M&Aデータベース』に基づく戦前期日本のM&Aに関する研究が実施され、それぞれの成果がCOE叢書に結実した。
 本プロジェクトでは、上記の研究テーマについて、国際比較の視点を新たに取り入れることで、また法律分野の専門家との共同研究をこれまで以上に積極的に行うことによって、一層の深化・洗練を図っていきたい。また研究の推進および充実に欠かせない各データベースの拡充を行い、グローバルCOEプロジェクト期間中の学外公開を実現したい。歴史的視点を取り入れた実証分析の蓄積は、現在および将来の日本における望ましい企業統治のあり方や企業と企業法制・資本市場法制との関係を考察する上でより深いインプリケーションを与えるものとなろう。
研究活動
 宮島英昭 花井俊介 斉藤直
 

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