4. |
期待される直接的効果 |
(1)
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我国特定取引所金融商品市場への開示登録を前提とする我国特定投資家向けプロ公募市場の創設(PSM-J:Professional Securities Market-Japan)により、我国発行体・関連仲介機関等にとっての、国内プロ向け債券市場の利便性の向上による、市場競争力の強化と市場流動性の増大。 とりわけ、投資適格国内普通公社債の数パーセント程度しか購入していない一般投資者(リテイル)にウィンドウを開けておくための開示コスト、開示頻度それに伴う引受審査によって失われている数十営業日の起債スロットから生じるわが国企業の社債による資金調達チャンスの喪失にともなう国民経済への打撃の修復。具体的には、 |
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(1-1) |
公募社債発行の際のマーケティング期間・引受審査期間等に関する制約から解き放たれることで、発行体にとってのブラックアウト(社債発行不可能)期間が大幅に圧縮される。 |
(1-2) |
従来の「適格機関投資家私募債」等と比較した場合に、特定取引所金融商品市場に開示登録を行うことにより、届出がされていない旨の告知、書面交付が事実上省略でき、流通市場での売買に際しての煩雑な手続きは不要となる。 |
(1-3) |
開示面での簡素化を含む、プロ向け社債の発行実務の円滑化と合理化、及びそれらに伴う、市場関係者各位における各種のコストと手間の削減が期待できる。 |
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(2) |
我国の取引所への開示登録を前提とするアジア域内プロ向け債券市場の創設(AIR-PSM:Asian Inter-Regional Professional Securities Market(PSM-Jを含む))により、日本及びアジア域内の資金調達者にとっての調達ソースの拡大・多様化と、日本とアジア域内他世界中のプロの機関投資家の、発行者情報及び価格情報の充実と日本を含むアジア投資の円滑化・投資機会の増大を、同時に図ることができる。
そのうち、本邦のプロ投資家向けの発行・販売勧誘に関しては、 |
(2-1) |
我国の取引所への英語での開示登録を前提とする特定投資家向けプロ公募市場(PSM-J)の創設により、非居住者発行体にとっての現行のサムライ債に係る問題の多くが、事実上解消され、既存のサムライ債市場は、工夫次第で、この新市場に、リテイル向けを除き、そのかなりの部分が移行することが想定可能である。 |
(2-2) |
国の取引所への英語での開示登録、及び、ユーロ債・ユーロMTNプログラムのオファリング・サーキュラーへの本邦取引所Listingステータスを有することの記載を前提として、非居住者及び居住者発行のユーロ債・ユーロMTN(ないしアジア域内プロ向け債・AMTN)を対象とした、米国の 144Aオプションと同様の、日本のプロ向け市場の創設(「PSM-J 適格」)、及び、PSM-J 適格条項 が入っていない場合に、既発債を本邦取引所にリストすることによって本邦プロ投資家に販売勧誘可能となる「PSM-Jオプション(プロ対応限定的開示)」により、本邦プロ投資家へのアクセスが円滑化する。
(これらは、金融庁による、2008年の特定投資家向けプロ市場制度の創設によって新市場の創設が可能となったもの) |
5. |
新市場であるアジア域内プロ向け国際債券市場「AIR-PSM」への実務的なインプリケーション |
今後のオフショア・ホールセール欧州市場(ユーロ債市場)での プライマリー新発外債 及び ユーロMTNプログラムのドキュメンテーションに PSM-J 適格条項を加えると、本邦プロ投資家向けへの販売勧誘が可能な、円建て他の各種国際債の発行を含む、事実上のプロ向けEuro Asia オファリングないし、グローバル債オファリングとなる。 |
(1): Euro Offering + US 144a 条項 (米国国内プロ向け) + PSM-J 適格条項、または
(2): Euro Offering + US SEC Registration (米国国内一般投資家向け) + PSM-J 適格条項、 となる。 |
説明1:
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実務的には、Euro Offering Circular に PSM-J 適格 であるドキュメンテーションがされていること、我国の特定取引所金融商品市場がその英文目論見書の特定の部分を特定証券情報として承認し、開示登録がなされていることが必要。そのようにすることで、ユーロ外債は、売出しの届出も私売り出しの制限の遵守も求められることなく(ただし特定投資家私売出しの制限を除く)、人数・期間制限も受けずに、我国のプロ投資家に、プライマリーそしてその後のセカンダリーでも、プロ公募・プロ売出し勧誘が可能となる。
この場合、例えば、ロンドン上場と、我国特定取引所金融商品市場への上場のダブル上場となるが、我国特定取引所金融商品市場が定める特定証券情報/発行者情報のアップデートに係る発行者の負担をどの程度ミニマイズ可能かがポイントとなろう。 |
説明2: |
準拠法を日本法とするかどうかは発行者の判断であるが、日本の機関投資家をターゲットする限りは PMS-J 適格条項 をつけて、必ず我国特定取引所金融商品市場への開示登録を行うという慣行ができれば、日本市場の振興が果たされることとなる。そして、それは、ロンドンなど欧州市場と協調的に発展可能と思われる。 |
説明3: |
EMTN目論見書、ユーロ・オファリング・サーキュラーに PSM-J 適格条項 が入っていない場合で我国プロ投資家向けの販売勧誘を行う場合は、既発債市場におけるPSM-Jオプション(プロ対応限定的開示)付のプロ売出し となる。
この場合の特定証券情報/発行者情報のアップデートが、どの程度発行者の負担になるかが、ポイントとなる。 |
現行のサムライ債については、既に有報等を提出している継続開示会社は、特定証券情報について有報の該当部分を参照する方式か、新たに英文特定証券情報を作成するかの選択権が与えられることとなろう。(リテールターゲットは除く)
まったく初めてサムライ債を出す発行体については、新規の特定証券情報を英文で済ませられるPSM-Jは、福音となろう。 |
6. |
メンバー及びオブザーバー (太字39名は第四回出席者) |
共同座長: |
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簗瀬捨治 |
早稲田大学上級研究員兼客員教授、長島・大野・常松法律事務所 弁護士 |
犬飼重仁 |
早稲田大学法学学術院教授 |
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研究顧問: |
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上村達男教授 |
早稲田大学法学学術院長・法学部長、GCOE所長・比較法学総合研究所所長 |
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メンバー: |
(順不同) |
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[ 金融機関 ] |
鈴木裕彦氏 |
バークレイズ・キャピタル証券株式会社ディレクター・引受審査部長 |
吉田 聡氏 |
大和証券キャピタル・マーケッツ株式会社 グローバル・マーケッツ業務部部長 |
池田杏子氏 |
大和証券キャピタル・マーケッツ株式会社 グローバル・インベストメント・バンキング企画部 |
木村 裕氏 |
日興コーディアル証券株式会社 投資銀行本部資本市場業務部ディレクター |
工藤克典氏 |
野村証券 顧問 |
東 正憲氏 |
野村証券キャピタルマーケット部 マネージング・ディレクター DCM担当 |
清水純子氏 |
三菱UFJ証券キャピタル・マーケッツ・グループ リーガル・エグキューション部 |
堀内将道氏 |
三菱UFJ証券キャピタル・マーケッツ・グループ リーガル・エグキューション部ヴァイス・プレジデント |
安藤 毅氏 |
みずほ証券グローバル投資銀行部門 資本市場グループ 副グループ長 |
飯田 純氏 |
三井住友銀行 証券ファイナンス営業部 副部長
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宇都 信哉氏 |
三井住友銀行 証券ファイナンス営業部 上席部長代理 |
澤岡 直樹氏 |
三菱東京UFJ銀行 国際企画部 情報戦略室副室長 |
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[ 機関投資家 ] |
玉木伸介氏 |
年金積立金管理運用独立法人審議役・企画部長 |
平井一志氏 |
年金積立金管理運用独立法人情報化統括責任者(CIO)補佐官 |
徳島勝幸氏 |
株式会社 ニッセイ基礎研究所 金融研究部門 主任研究員 |
田靡 修氏 |
国際投信投資顧問株式会社 執行役委員債券運用部長 |
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[ 格付機関 ] |
中塚富士雄氏 |
格付投資情報センター市場研究室長 |
仲川 聡氏 |
株式会社日本格付研究所(JCR)国際部 シニアアナリスト |
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[ 発行体企業等 ] |
大川喜生氏 |
(株)日本政策金融公庫 国際協力銀行 アジア大洋州ファイナンス部第4班 調査役 |
横山洋一郎氏 |
(株)日本政策投資銀行 財務部長 |
山寺 智氏 |
アジア開発銀行(ADB) 地域経済統合室 エコノミスト |
内山昌秋氏 |
SBIネットシステムズ株式会社代表取締役社長 |
村上雅春氏 |
NTTデータ・ジェトロニクス株式会社
金融事業本部・金融ビジネス企画部・部長 |
佐藤良治氏 |
日立キャピタル損害保険株式会社代表取締役社長 |
野田一夫氏 |
トヨタファイナンシャルサービス株式会社 リスクマネジメントグループ シニアマネージャー |
小峰琢磨氏 |
オリックス株式会社財務部資本市場課主任 |
田中雄志氏 |
オリックス株式会社財務部資本市場チーム |
大野慎也氏 |
オリックス株式会社リスク管理本部主任 |
薮田敬介氏 |
日立製作所財務二部 担当部長 |
神谷昌豊氏 |
日立製作所財務二部 連結資金グループ主任 |
青井孝之氏 |
富士通株式会社財務経理本部財務部 グローバルキャッシュマネジメント部マネージャー |
原田靖博氏 |
格付投資情報センター特別顧問(3/31まで)
フューチャーアーキテクト株式会社 フューチャー経済・金融研究所長(4/1から) |
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[ 取引所・市場インフラ提供機関・自主規制団体等 ] |
伊藤 豊氏 |
株式会社TOKYO AIM取引所COO |
松田亜希子氏 |
株式会社東京証券取引所派生商品部 総務企画グループ 兼 新商品推進室 |
小柳雅彦氏 |
日本証券業協会 常務執行役 (第3回以降) |
中村孝博氏 |
日本証券業協会 市場企画部長・市場統計室長 |
池上裕司氏 |
証券保管振替機構 社債等振替業務部長 |
原 大介氏 |
スイフトジャパン バイズプレジデント |
田中 寛氏 |
スイフトジャパン バイズプレジデント |
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[ 法律家 ] |
石黒 徹弁護士 |
森・濱田松本法律事務所 |
箱田英子弁護士 |
森・濱田松本法律事務所 |
石塚洋之弁護士 |
長島・大野・常松法律事務所 |
松野絵里子弁護士 |
長島・大野・常松法律事務所 |
高山泰之弁護士 |
長島・大野・常松法律事務所 |
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[ 研究者 ] |
青木浩子氏 |
千葉大学専門法務研究科教授 |
坂東洋行 |
早稲田大学大学院法学研究科 博士課程 |
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オブザーバー: |
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陣田直也氏 |
財務省国際局地域協力課地域協力調整室長 |
久保田洋平氏 |
財務省国際局地域協力課地域協力調整室 |
浜辺哲也氏 |
経済産業省経済産業政策局産業資金課課長 |
永田伯治氏 |
経済産業省経済産業政策局産業資金課課長補佐 |
露口洋介氏 |
日本銀行国際局アジア金融協力センター調査担当リサーチフェロー |
福田聖俊氏 |
企業活力研究所主任研究員・企業財務協議会及び日本資本市場協議会事務局 |
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早稲田大学事務局: |
金 せい |
早稲田大学大学院法学研究科 博士課程 リサーチ・アシスタント |
韓 敬新 |
早稲田大学大学院法学研究科 博士課程 リサーチ・アシスタント |
桜沢隆哉 |
早稲田大学大学院法学研究科 博士課程 リサーチ・アシスタント |
熊 潔 |
早稲田大学大学院法学研究科 博士課程 リサーチ・アシスタント |