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公開会社法の意義を検証する 企業社会と市民社会の基本法へ−民事法の呪縛を解けるか (2010年2月8日開催)
昨日(2月8日)午後に開催された早稲田大学グローバルCOEシンポジウム『公開会社法の意義を検証する−企業社会と市民社会の基本法へ−民事法の呪縛を解けるか』(13時より18時30分まで−早稲田大学井深ホール)には、学会・金融・法曹界を中心に320名を超える聴衆が来場され、問題の核心に迫る熱気あふれる論議の場となった。 財務省峰崎副大臣はいのち・消費者・生活者の視点を強調する鳩山政権にとって、新しい公共の概念が必要であり、公開会社法はそうした視点と一体のものでなければならないことを強調された。 池尾教授は日本の企業法制にとって一貫して追及されるべきは一般株主・少数株主への責任であるとされた。 公認会計士協会の吉田慶太常務理事は情報開示・会計・監査に従事する専門家として、金商法の概念と会社法の概念との一体化が必要であることを強調された。 尾崎教授は日本の企業実態に即した企業結合法制の必要性を強く訴え、支配権を行使するならば責任あり、の観念を前提にその立証の困難を克服する方法の検討が必要であることを主張された。 上村教授は次期改正が昭和25年改正に匹敵する、基本的な理念の大きな転換を意味するもの、あるいはその魁けとなる可能性があり、それは会社法が投資家概念を射程に捉えることにより、一気に企業社会と市民社会の基本法としての性格を獲得していく、そうした性格の法への転換を意味することになろうと述べた。
全体シンポジウムに入り、稲葉威雄弁護士は、現在の会社法が会社法の原型を放棄してしまったのを取り戻す必要があること、企業結合法制は会社法の現代化の積み残しであり、企業結合法制なき純粋持株会社化の推進は「下水道なしで水洗便所を作ったようなもの」(あえて忠実に再現)とされた。 また法務省の有力OBである稲葉弁護士が、この問題で法務省・金融庁・経産省の三省の連絡調整を行い双方のニーズの確認を行うことは必要不可欠とされ、法務省事務局が単独でやれるような状況でないことを明言されたことも注目に値する。 石黒弁護士は株式会社法の本拠地は資本市場であって株主総会ではないとされ、企業買収に代表されるような現代の株式会社をめぐる問題の多くが、労働者や一般投資家等を含む総力戦の様相を呈していること、現在の株主の問題だけでは対応できないことを強調された。 末村篤氏は、上場会社制度が有限責任と株式の自由譲渡性を前提としたことで、経営の規律と株主の質の低下を招くという究極の矛盾を抱えた制度であり、私的な世界の前に社会的公共性を強調した制度展開が必要であること、公開会社法はそうした役割を果たすべきものではないかとされた。
その後会場から、松尾直彦弁護士(前金融庁幹部、東大教授)が公開買付制度を会社法に移すべきではないこと、金融商品仕組み法としての株式会社法に信託業法のような業法が入ることをどう思うかとの質問があり、また森淳二煖ウ授(福岡大学)から、従業員の位置づけについてなお真剣に検討すべきであるとの発言があった。これに対して上村教授より、公開買付制度は資本市場法制の一翼を占める法制であり、会社法にすることはありえないこと、金商法の概念を会社法上認知しても、行政法的な規制は金商法の目的達成のためのものであり続けるのであり会社法のガバナンスがそれに協力することはあっても固有の会社法部分に行政法規が参入することにはならないこと、会社の目的をミッションの最大実現と見るなら、会社組織はミッションの実現のための組織であるから労働者はその正当な構成員たり得ることになる、との回答がなされた。 後日、詳細は公表される予定である。なお、当日配布された資料『公開会社法Q&A』をHP上で公開する。 |
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